アンケートがどういったものかはイメージできても、アンケートを作る側・分析する側として、目的の定め方や集計方法まで考えることは簡単ではありません。ここではアンケート分析を行う上で知っておくべき、実施の流れや目的別の集計方法について解説します。
アンケートは、商品・サービスに対するユーザーの意見を効率的に集められる方法の1つ。アンケートで集まった意見を適切に活用できれば、商品開発やマーケティングに役立てられます。ただ、闇雲に実施して回答を集めるだけでは成果につなげられません。集計結果を適切に分析できるように、手段を把握しておきましょう。
アンケートの調査結果は回答した人ごとにデータが並んでいる状態なので、まずは集計してデータを見やすくしましょう。アンケート調査結果を集計する方法は、単純集計とクロス集計、自由記述集計の3つがあります。
集計する際は、Excelなどを用いてグラフや集計表にしてまとめましょう。
アンケート調査結果を集計したら、抽出データの分析を実施します。その際、クラスター分析やアソシエーション分析、主成分分析などが用いられます。
分析方法に合わせて、回答者の類似性や、関連性を把握できます。例えば「商品に満足している」と答えた層に関連することはなにか、ある感想を持つ人は何を好む傾向にあるのか、といったデータが得られます。
アンケートの実施目的に合わせて方法を選ぶようにしてください。
単純集計は、集計方法の中で最もシンプルだと言われている方法です。例えば、「商品Aを使ってみたいと思うか」という質問に対して、はい・いいえで答える場合、それぞれの人数を合計したものが単純集計です。
足し算をするだけで簡単に行えるのがメリットですが、全体的な結果しかわからない点がデメリット。アンケート結果の概要を知りたい時に使える方法だと言えます。
この集計方法は、単純集計より詳細な分析を可能にするもので、性別や年齢など属性別の傾向について把握できます。
上記の例で、はいと回答した人が100人中、80人という結果だったとします。これは8割が使用したいという結果です。しかし80人のうち男性が50人、女性が30人だとすると、以下のことが言えます。
商品Aに魅力を感じているのは男性に多く、女性の方が少なかったということです。この結果から商品Aは、男性向け商品として発売したり、女性が魅力を感じるよう改良したりするなどといった対策を講じられます。
自由記述の集計方法は主に2種類あり、数値での回答と文章によるものです。
数値で回答している場合は、読み間違いを防ぐため、平均値や中央値、標準偏差、最小値、最大値を求めるようにしてください。ばらつきが大きくて平均値が当てにならないデータの場合、中央値を参考にするなどの方法を採用するとよいでしょう。
文章で回答している場合は、自由記述の一覧を作成しましょう。そして、キーワードで絞り込んだり、アフターコーディングという方法を実施したりします。
数値での回答場合は、以下の4項目を確認します。
平均値を求める →偏差(データ-平均値)を求める →分散(各データの偏差の二乗の合計をデータの個数で割る)を求める →3の正の平方根を求める
標準偏差を求めることで、データが平均値からどれぐらい散らばっているかががわかります。標準偏差が大きいとデータのばらつきが大きく、標準偏差が小さいとデータのばらつきがあまりないことになります。
たとえば極端に大きい数値があると、平均値が実態より大きな数値になることがあります。より実態に近い数値を知るために、平均値だけでなく最大値・最小値も押さえておきましょう。
アンケートの回答がテキスト形式の場合は、詳しい回答が得られる反面、集計が複雑化しやすいのが特徴です。「アフターコーディング」と「テキストマイニング」という2つの方法を用いて集計・分析します。
クラスターとは集団やグループなどを意味する言葉であり、クラスター分析とは「データ全体を任意のグループへ分類し、対象をカテゴライズする方法」です。大きな集団として収集されているデータの中から、共通項など一定条件に合わせて特定のグループにデータを振り分け、それぞれの特徴や内容を個々に分析・管理することができます。
性別や年齢、国籍といったデータ条件だけでなく、価値観や考え方、思想信条といった内面的な条件に合わせたカテゴライズもできることは重要です。
クラスター分析にはさらに「階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」といった種類があります。
アソシエーション分析とは、収集された調査結果やデータをもとにして、「仮定:もし(If)」と「結果:こうなる(Then)」という相関関係の有無を検証していく分析方法です。
アソシエーション分析は、特定の商品における消費者の購買行動予測や、マーケティング戦略の策定といった目的に適しています。
具体的には、あらかじめ収集されているアンケート結果から顧客の好みや消費傾向を抽出した上で、「口コミや感想にAという好みの傾向を書いている人であれば、Bという商品についても好意的な可能性がある」といった仮説を構築できます。
主成分分析とは、全体データとしてまとめられている中に存在する数多くの「変数」を、少ない変数へ置換して要約し、内容の理解度を高める分析方法です。
具体的には、大量に存在している変数を「1~3の変数=主成分」に置換して分析します。
例えば飲食店の顧客アンケートには「価格」「味」「見た目」「店の雰囲気」「店員の態度」など様々なテーマが変数として含まれています。そしてその中から「味」「価格」「見た目」だけを抽出してデータをまとめ直すことで、新しい商品の開発やメニューの改善に役立つ意見をまとめられるかも知れません。
決定木分析とは、アンケートの調査結果などを「決定木(樹形図:ディシジョンツリー)」を用いて段階的に細分化していき、より詳細な消費者の行動分析やターゲット層の分類を進めていく分析方法です。
例えば購入率に関する全体のデータを、「男/女」という変数で大別し、さらに「男性」のデータを「既婚/未婚」といった変数で分類し、といったことを繰り返していきます。
これにより、例えば商品を最も購入しているのは「独身男性」であるといった結果を導くことが可能になります。
決定木分析では変数の設定を調整することで様々なパターンを視覚化できることがポイントです。
時系列分析は文字通り、顧客の声や管理データを時系列にもとづいて分類し、それぞれの比較や評価を行う分析方法です。
例えば公共交通機関の利用状況に関して、全体の総数として得られたデータを時系列によって分類すれば、実際には大半の利用率が午前中と夕方以降に集中しており、お昼頃はあまり利用率が高くないといった実状を把握することができます。
これにより、特に利用客が集中するタイミングを狙ってスタッフの数を拡充したり、サービスの対応数を増やしたりといった事業戦略を構築することができます。
Excelで集計する場合、「COUNTIFS関数」を活用すると、マトリクス表やクロス表を簡単に作成可能です。COUNTIFS関数は、条件と範囲を指定し、該当するものだけをカウントする関数のことです。たとえば、「女性で80点以上の人」などのように、属性と合わせたクロス集計ができます。
テキストマイニングツールは、テキスト解析エンジンにより、大量のテキストデータをスピーディーかつ確実に、そして高精度で処理できるのが特徴的。
この方法を用いると、Excelなど手作業でデータを入力したり確認したりする手間が不要になるため、業務を大幅に効率化することが可能になります。マンパワー不足のため分析しきれなかった自由形式などのアンケート結果もデータ化して有効活用できるようになるのがメリットでしょう。
さらに、テキストマイニングツールの多くは、分析結果をレポートとして活用しやすい形式で自動作成したり、ダッシュボードで共有したりできる機能を備えています。以上のことから、データ加工をしなくても、そのままの状態で会議資料として活用することもできるのです。
手軽にアンケート結果の集計をしたい方は、集計ソフトやアプリなどを取り入れてみるのがよいでしょう。専門的な知識を持っていなくても使えるツールは多々あります。
アンケートを作成できるWebツールにも集計機能がついているため、利用するのがおすすめです。回答されたデータをリアルタイムで反映したり、自動的にグラフを作成できたりする機能もあるため、集計になるべく時間をかけたくない方にぴったりです。
数こそ回収したものの、分析して結果を導き出すのが難しいアンケート分析。とりわけ自由形式タイプの記述回答は「ひとつずつ時間をかけて、チェックしていくしかない」というイメージがあるもの。アンケートの分析作業そのものが業務負担になっているケースも珍しくないでしょう。
テキストマイニングツールを活用し自動分析を行うことで、業務改善ヒントの効率的な分析が期待できます。テキストマイニングツールはアンケート分析にどう活かせるのか解説します。
アンケート分析にテキストマイニングツールを活用するメリットについて見てみる
アンケートを効果的に有効活用するためには、欲しい情報を得るのに有効なデータ集計になっているのかどうかがポイントです。事前準備・集計・結果分析の3ステップを実行することで、アンケートを有効活用できます。事前準備では、統計的に信用できるデータなのかチェックし、カウントする回答の定義を決めます。集計では、データを全体から細部の順番で見て、集計単位を複数用意。結果分析では、グラフなど結果を表示する適切な方法を選び、因果関係・相関関係の視点をもって結論づけます。
アンケート分析の失敗では、「調査目的を明確にしておらず、聞くべき質問が不足していた」「回答者や回答形式が不適切だったため、有効な回答を得られなかった」「よく見かける質問をとりあえず設定したら、気づきのある回答を得られなかった」などが挙げられます。
アンケート分析を成功させるためには回答者を定め、質問や回答形式を工夫するのがポイント。目的に合った回答しやすいアンケートを作成し、全体像を把握した後に細部を分析するようにしましょう。回答データに有意性があることも重要です。
アンケート調査は数値化が容易にできるため、分析しやすいという魅力のある方法です。時間もコストもかかりにくく、分析方法によって様々なデータを得ることができるでしょう。設問の方法さえ工夫すれば安定した回答も得られやすい特徴も。ただ回答一つ一つの深掘りがしにくく、真偽を確かめることができないなどのデメリットもあります。しっかりとメリット・デメリットを把握したうえで適切なアンケート調査を行うことが大切です。
アンケート分析を活用することで、顧客満足度や従業員満足度の把握、認知度・ブランドイメージの調査などに役立つメリットがあります。また、経営トップ層が現場の実態や社員の声を把握する助けにもなり、アンケート分析の結果によって組織の意思決定や改革に影響を与えることも可能。
実際にアンケート調査・分析がどのように活用されているのか、アンケート調査・分析を取り入れている企業の事例を調査しました。それぞれの事例の特徴やアンケート調査・分析の活用で得た成果をまとめています。
アンケート分析を効果的に実施するには、明確な目的と適した方法を設定する必要があります。また、調査方法についても適切なものを選択することで、アンケート分析の効果をより高めることが可能。アンケート調査の方法は定量調査と定性調査に大別され、それぞれで得意とする調査やメリットが異なります。適切なアンケート調査を選択するために知っておきたい、アンケート調査の種類をまとめました。
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